世界にはさまざまな事情から生みの親と暮らせない子どもたちがいます。国連はこうした子どもたちが里親制度や養子縁組を通じて家庭で暮らすことを望ましいとしています。しかし、日本では施設で生活する子どもが8割を超えているのが実情。より多くの子どもたちが家庭で暮らせる社会を実現するため、さまざまな取り組みが必要とされています。

日本では生みの親と暮らせない子どもの8割以上が施設で生活

国連で採択された「子どもの権利条約」では「子どもが家庭で育つ権利」が謳われています。しかし、生みの親と暮らせない子どもたちが世界中に存在しています。こうした子どもたちには家庭的な環境が必要です。子どもには生まれる環境を選ぶことはできません。社会全体での取り組みが必須なのです。

日本には実の親と暮らせない子どもたちが約4万6000人存在します。その約84%は乳児院や児童養護施設で暮らし、残りの約16%は里親家庭やファミリーホーム(5~6名の子どもを家庭に迎え入れて養育する住居)で暮らしています(2014年)。社会的養護を必要とする子どもの8割以上は施設で育ち、施設から社会に巣立っています。

一方、欧米では施設で暮らす子どもの割合は低く、多くは里親家庭で暮らしています。イギリスは71.7%、フランス54.9%、アメリカ77%が里親の元で育てられています。アジアでも香港79.8%、韓国43.6%が里親家庭に預けられています。
また欧米では実の親の元に戻ることができない子どもに対しては養子縁組(Child Adoption)を優先して検討することも多くあります。英国では年間4500件の養子縁組、米国では同5万件の養子縁組が成立しています。
これに対して日本では、子どもの福祉を対象とした「特別養子縁組」が成立するのは年間わずか500件前後にとどまっているのです。

子どもに必要なのは関係性を継続できる家族

2009年に国連で採択された「
子どもの代替養育に関するガイドライン
」では、実の親元に復帰できない子どもたちが、大人になっても関係性を継続しうるような家族を得ることを重視しています。これは「パーマネンシー」(恒久的な家庭)という考えかたです。養子縁組または長期里親委託など継続した人間関係のもとで育つことが望ましいとされています。
2016年6月には改正児童福祉法が公布され、生みの親に育てられない子どもは、養子縁組や里親・ファミリーホームなど家庭と同様の環境で、継続的に育てられることが原則となりました。そして法律の改正により養子縁組は児童相談所が取り組むということが明確に位置づけられました。
また同年12月には民間の養子縁組団体の質の向上を目的とする「民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童の保護等に関する法律」が成立しています。

特別養子縁組は”普通”じゃない?

「特別養子縁組」という制度はなぜ”特別”なのでしょうか。日本では特別養子縁組が導入されるより以前から「養子縁組」の制度は存在していました。特別養子縁組と区別するため「普通養子縁組」と呼ばれることもあります。おもに、家の存続のためや、跡取りを設けるためといった目的で普通養子縁組は行われてきました。

これに対し「特別養子縁組」は子どもの福祉を目的として1987年に民法の改正で導入されました。
特別養子縁組では、養親(ようしん)と養子が実の親子関係に準じる安定した関係を成立させることを目的としています。それ以前の制度とは大きく異なるポイントが下記の2点です。

1.実親との親族関係を消滅させる
2.養子縁組の申し立て時に養子の年齢が原則6歳未満
【普通養子縁組と特別養子縁組の比較】(
http://happy-yurikago.net/adoption/
特別養子縁組制度において養親になれるのは、配偶者があり、原則として25歳以上。そして夫婦共同で養子縁組をする必要があります。また、養親の都合による子どもとの離縁は禁止されています。
養親は子どもを思春期、成人後も見守り続けてくれる存在として、子どもの健全な成長発達にふさわしい家庭環境を提供していきます。

養子で育った子どもは性格が前向き?

2016年に実施した「養子縁組家庭に関するアンケート調査」では子どもの約70%が「自分自身に満足している?」という問いかけに肯定的な回答を寄せています。これは11年の内閣府が実施した「親と子どもの生活意識調査」での同じ問いかけへの肯定的回答46.5%に比べ、高い数字です。
(
http://blog.canpan.info/nfkouhou/archive/852
)
安定した恒久的な生活環境にあることが、子どもたちの自己肯定感の高さにつながっているのではないかと推測されます。

特別養子縁組や里親を広めるために

日本財団はこれまで過去40年間にわたり、すべての子どもたちがあたたかい家庭で暮らせる社会を目指して支援を行ってきました。

2013年に立ち上げたのが「ハッピーゆりかごプロジェクト」。特別養子縁組や里親制度の普及を進め、生みの親と暮らせない子どもたちがあたたかい家庭で育つことができる社会を目指すプロジェクトです。
その主な活動の一つが社会的養護が必要な子どもたちの現状を広く知っていただくための周知啓発活動です。4月4日を「よーしの日」と定め、イベントや講演・シンポジウムの実施や、ホームページやFacebookでの情報発信を行っています。
2017年4月2日に東京・赤坂の日本財団ビルで行われた「よーしの日 2017」キャンペーンのトークイベントに登場した一人、シンガーソングライターの川嶋あいさんは養親の元で育ち、「不思議なほど、とてつもない愛情をもらった」「私の人生にすべての情熱を注いでくれた」と亡き養母から受けた愛について語りました。
【シンガーソングライターの川嶋あいさん】 (
http://blog.canpan.info/nfkouhou/archive/921
)
また、養子縁組で6歳、4歳、1歳の3人の子どもを育てている佐々木啓子さんは、川嶋さ
んの話に対し、「”ここが自分のおうち”と言ってくれる子どもがいる幸せを噛みしめている」と養親となる側の喜びを表現し、「家族というのは血のつながりがあるか、ないかではなく、築いていくものだ」と発言。

特別養子縁組が子どもたち、そして養親たち双方にもたらした素晴らしい面が明らかにされました。

また養子縁組家庭に関するアンケートなど家庭養護の推進に関わる調査研究や、ネットワークの構築にも力を入れています。
16年12月には「報告書 養子縁組家庭へのアンケート調査」、17年4月には「子が15歳以上の養子縁組家庭への生活実態調査」を発表。養子縁組の養親や養子がどのような生活状況にあるかを明らかにするため、アンケート調査を実施し、まとめました。また、2016年4月4日に全国の20県市と日本財団を含む13の民間団体による「子どもの家庭養育推進官民協議会」が発足し、「すべての子どもが温かく幸せな家庭に守られ、自らの可能性を最大限発揮できる国を目指す」との宣言文を発表しています。
さらに里親や特別養子縁組に関連する研修も行っています。
英国で開発された里親のためのトレーニングプログラム「フォスタリングチェンジ・プログラム」を促進するフェシリテーター養成の研修会も今年2月20日から5日間に開かれました。
【初日の研修会会場の様子】 (
http://blog.canpan.info/nfkouhou/archive/891
)
まずは知ること(周知啓発、調査研究)、社会の仕組みを変えること(政策提言)、養護が必要な子どもを受け入れられる個人をふやすこと(里親研修)。すべての子どもたちがあたたかい家庭で暮らせるようになるためには、どれも欠かせません。

諸外国に比べると日本の里親委託率はまだまだ低いレベルで推移していますが、2015年3月時点で6000人の子どもが里親のもとで生活し、ここ数年増加傾向にあります。養子縁組2013年には474件、14年には513件と500件を超え、15年も544件とここ数年は増加傾向にあります(司法統計)。
 
少しずつではありますが、社会は社会的養護を必要とする子どもたちが家庭で暮らすことのできる方向に向かっています。

日本財団では今後も特別養子縁組や里親制度の支援を続けていきます。

【関連リンク】
すべての子どもに暖かく幸せな家庭を!
子どもの家庭養育推進官民協議会設立
20県市と13民間団体が参加
(
http://blog.canpan.info/nfkouhou/archive/668
)

子どもの70%が「自分自身に満足」
養親も積極的にかかわり
日本財団が養子縁組アンケート
(
http://blog.canpan.info/nfkouhou/archive/852
)

里親と子どものより良い関係に向けて
英国の先進的プログラム研修会開催
まずは促進するファシリテーター養成
(
http://blog.canpan.info/nfkouhou/archive/891
)

「とてつもない愛情をもらった」
川嶋あいさん、養親の母の愛語る
90%以上が「育て、育てられてよかった」
(
http://blog.canpan.info/nfkouhou/archive/921
)

日本財団ハッピーゆりかごプロジェクト
(
http://happy-yurikago.net/
)