2016年、「日本財団ソーシャルイノベーター支援制度」で優秀賞を受賞した Collective for Children。受賞をきっかけにスタートしたプロジェクトの今を追いました。
--「Collective for Children」は、関西で子どもの支援を行っているNPO法人をまとめ、協働で活動をなさっているそうですが、なぜこのような座組になったのでしょうか? 発足の経緯を教えてください。
河内:
これまで私が代表を務めるNPO団体「み・らいず」は障害者福祉を中心に活動してきました。活動のなかで、行政の委託を受け、子どもの貧困の学習支援もするようになり、貧困のなかにいる子どもたちの数が非常に多くなっていることを実感していました。子どもや若者への支援を行っているほかのNPO団体も同じで、お互いに「どうしています?」「どうしたらいいだろう」と情報交換をしていました。現在は、どんどん膨れ上がってくる子どもの貧困の問題に対して、目の前の対処に追われている状況です。それぞれの団体が別々の方法で解決を試みていたものの、ひとつの団体だけでは子どもの貧困を解消するには限界がありました。

 こうした状況を打開するために、私やノーベルの高亜希(Collective for Children 共同 代表)などが中心になって話し合ううちに、それぞれのNPO団体が単独で活動するのではなく、子どもの貧困について複数のNPO団体が協働で取り組むというアイデアがまとまりました。それが6のNPO団体が参加するCollective for Childrenの発足のきっかけです。

 もともと関西のNPO団体では阪神淡路大震災以降、社会起業家を育成するコミュニティがあり、そのなかで社会起業家たちが切磋琢磨していました。だから参加団体の代表者は以前から顔見知りで、Collective for Childrenを発足する際、団体の目的やビジョンがすぐに共有できました。

 参加している主要な団体の活動歴は、「み・らいず」は障害者福祉、「ノーベル」は病児保育、「ブレーンヒューマニティ」は青少年の学習支援活動、「あっとすくーる」はひとり親家庭の支援、「Chance for Children」が教育クーポンの支援を東北と大阪市で行ってきました。

 これらの団体がお互いに協働して、子どもたちの貧困の問題に取り組み、Collective Impact(コレクティブインパクト、異なる団体が互いに強みやノウハウを持ち寄って、同時に社会課題に対する働きかけを行うことにより、課題解決や大規模な社会変革を目指すアプローチ)を狙っていこうという目標ができました。
【Collective for Children共同代表 河内 崇典】
--現在はどのような活動をしているのでしょうか。
河内:
具体的な活動としてはChance for Childrenがすでに持っていた教育バウチャー(塾、習い事、体験活動などに利用できるクーポン)の仕組みをモデルに、クーポンの提供とソーシャルワークを合わせた「子ども・若者応援クーポン」の提供を始めました。Chance for Childrenでは以前から、塾、通信教育、習い事、スポーツ、体験活動など幅広い教育サービスが無料で利用できる教育クーポンを貧困家庭の子どもたちに配る活動をしてきました。その活動を参考にして、我々Collective for Childrenでは、経済的困難を抱える0~20歳の子ども・若者を対象に、クーポンの利用範囲を多様にしました。さらにソーシャルワーカー(相談員)がクーポンの使い方を始め、家庭・子どもの相談にのるサービスを加えました。

枡谷:これまで支援してきたなかで、教育クーポンがあっても、情報の収集などそのサービスにたどり着くまでの力が、家族にも本人にもない場合が多数ありました。そうした家庭にリーチできるようソーシャルワーカーが、直接クーポンの使い方などを丁寧に伝えたり、クーポン取扱事業者との橋渡し役になったりと、これまで支援が届かなかった家庭まで範囲を広げることが可能になりました。

河内:支援の範囲としては、尼崎市にある小学校区を中心に地域を設定。尼崎市で生活保護や就学援助が受けられる世帯収入の家庭の0~20歳の子どもたちを対象として活動を始めました。定員は200人で、利用者募集を進めてきました。同時に子ども・若者応援クーポンの取り扱いをしていただく事業者の開拓も始めています。
【Collective for Children 事務局長 枡谷礼路】
--クーポンを取り扱う事業者はどのようなところですか?また、協力依頼する際、苦労したことなどはありますか?
枡谷:
現在、クーポン取扱いを申し出てくれている事業者は25件。
 学習支援では個別指導の塾や、大手の学習塾も協力してくださっています。そのほか、ベビーシッター等の子育て支援サービス、ひきこもりの支援をしているNPO団体、スポーツ教室などに協力していただいています。
 そのほかにもそろばん教室や体操教室、英会話など、子どもたちが受けられるサービスを増やすために、さまざまな事業者に登録のお願いをしているところです。ただ、相手としてはこちらの団体を知らないですから、電話で「子どもさんたちの支援を…」という説明をすると、寄付を求められるのではないかと受け取られがちで苦労しています。

河内:活動していく上で、行政との協働事業ではないことの難しさを感じています。子ども・若者応援クーポンの対象家庭にも行政からのお知らせがいくわけではありません。「年間最大28万円分の子ども・若者応援クーポンを提供します!」と書かれた封書が届いても、うさんくさいと思って開封しないというケースが予想以上に多かったようです。
 また事業者にクーポンの取り扱いをお願いする際も、民間の活動で、どこからクーポンの費用が出るのかといったところからの説明から始めなくてはなりません。仕方のないことですが、活動内容について理解してもらうのに時間がかかってしまいます。
【クーポンは習い事のほかに、保育サービス等にも利用可能】
--複数のNPO団体がチームを組んでプロジェクトを進めていくことで、皆さんにはどんな影響がありましたか。
河内:
参加しているNPO団体は以前から交流があり、仲はよかったのですがチームとして仕事をしたことはありませんでした。共通言語や組織風土も違います。そのため発足当初は意見の食い違いがあったり、うまく動かないところがあったりもしましたね。
 そもそも僕たちはビジネスパートナーではありません。ビジネスパートナーだと分業になってしまい、コレクティブ・インパクト(立場の異なる組織が、組織の壁を越えてお互いの強みを出し合い社会的課題の解決を目指すアプローチ)にはならない。では、どうすればいいか?当初はそこがわかりませんでした。そんななかで、枡谷もメンバーとなっている事務局ができ、そのおかげで、各団体のスタッフとのコミュニケーションが取りやすくなりました。

枡谷:いろいろな団体のスタッフが集まって、事務局を運営しているので面白いです。多様性に富んだ代表たちをいかに動かすか、という話でいつも盛り上がっています。

河内:1年前は、各団体が自分の得意なことを言い合っていました。苦手なところは自分には関係ないので…という感じで。これは話し合う時間を積み重ねて解決していくほかありません。しかし、繰り返すうちに共通の言葉ができてきて、思いが伝わるようになった。ここで自分はどういうトスを上げればいいか、どういう会話をすればいいかというようなこともわかってきています。各NPOが組織風土を超えて、重ね合っていくことでコレクティブ・インパクトを実現できる土台ができたと思っています。
--現在「子ども・若者応援クーポン」など具体的な活動が始まりつつありますが、改めて「Collective for Children」の今後の目標を教えて下さい。
河内:
子ども・若者応援クーポンをきっかけとして、子どもたちのためのソーシャルワーカーを育てていけたらと思っています。私たちはケアマネジャーや、障害者の相談員をやってきたので、そのノウハウを子どもたちの支援の場に生かしたいですね。

枡谷:子どもに関わる仕事をしている人から、どうしたらいいのかわからないという声をよく聞きます。虐待が疑われる子、問題行動のある子どもがいるがどう対処したらいいだろうかと。Collective for Childrenが子どもたちの問題への対処法を集めたハブになればいいですね。

河内:そしてNPO、地域、市民を巻き込んだ複合的な支援を実現していきたい。言葉はおかしいですが「寄ってたかって、子どもたちを見守る」ことをしていかないと。当初はNPO同士がくっつくことがコレクティブ・インパクトだと思っていましたが、ソーシャルワーカーが中心になり、子どもと地域をつなぐことはもちろん、地域の子どもたちを見守る大人同士をつなぐことで生まれるインパクトを実現したいですね。
【写真右】河内祟典さん
Collective for Children 共同代表
NPO法人み・らいず代表理事

【写真左】枡谷礼路さん
Collective for Children 事務局長
NPO法人み・らいず
介護福祉士 相談支援専門員


河内祟典さんも登壇! 11月18日(土)の分科会「
ソーシャルイノベーションの本質