アメリカ発祥のダイバーシティが、日本へ到来

 1980年代後半に発表されたアメリカ労働省のあるレポートが、当時の国民を驚かせました。それはアメリカの労働人口の構成が大きく変化し、白人男性のみならず女性、有色人種、さらには障害者、高齢者などの活用を余儀なくされることを予見した内容でした。以降、アメリカでは喫緊の課題認識として「ダイバーシティ」の基本概念が浸透していきました。

 社会・組織を構成する個々人が、互いの違いを尊重し合う——。そんなダイバーシティの基本概念が、今、日本でも徐々に浸透してきています。性別・年齢・人種、さらにはLGBT(性的マイノリティ)のような表層的要素に加え、雇用形態、婚姻状況、収入、出身地、パーソナリティなどの深層的要素を含めて考えられるダイバーシティは、制度や仕組み——例えばワークライフバランス推進、女性人材の活用、育児休暇の奨励——として社会や企業のなかに組み込まれています。
 
 中でも、2016年に施行した障害者差別解消法により「合理的配慮」が行政・事業者に義務化されたのは、記憶に新しいところです。

制度や仕組みでカバーできない、マインドの醸成

 また、最近は仕事のパフォーマンスを向上させる施策として、「ダイバーシティ・マネジメント」が着目されており、これに近い観点から、企業・組織にいる全員の特有なスキル・考え方などを認め、積極的にビジネスに参画させる「インクルージョン」という考え方も広まっています。

 しかし、女性管理職の登用率を例にとっても、日本は先進国の中で最も低い水準にあるというのが現実です。つまり、制度や仕組みを整えるだけではダイバーシティを推進できないことに、多くの企業・組織の担当者が頭を抱えています。

 真のダイバーシティを推進するためには、社会を構成するすべての人々が「自分と違う人がいる」「自分と違う価値観がある」と認識し、“多様性を尊重し合う”マインドの醸成が必要不可欠です。そんな一朝一夕では成し遂げられないダイバーシティの実現に、少し違った切り口でアプローチする取り組みを紹介しましょう。

ダイバーシティを“体感”できるアート企画展

 2017年10月13〜31日の間、東京・表参道のスパイラルガーデンで日本財団DIVERSITY IN THE ARTS企画展「ミュージアム・オブ・トゥギャザー」が開催されます。

 かねてより、日本財団では障害福祉の現場でのアート活動支援に注力しており、これまでも美術館整備や展覧会制作の支援、キュレーター育成、作品群の収蔵や他の展覧会等への作品貸出など、さまざまな取り組みを行ってきました。上記イベントは、これらの経験やノウハウを元に2017年春にキックオフされた「日本財団DIVERSITY IN THE ARTS」の一環として企画されたものです。

 リサーチキュレーターたちが推薦した作家をもとに選ばれた22人の作家(障害のある作家15名を含む)による約500点の作品・資料・模型等のアーカイブを展示する他、「作品展示だけでダイバーシティは伝わらない」との問題意識から、障害の有無に関わらず同じ時間と場所でアートを楽しむ参加型鑑賞プログラム「アクセス・アート・プログラム」や、フードディレクター、菓子研究家と盲目の女性が提案する特別メニューを食べられる「フード・プラグラム」も実施されるのだとか。

 まさに「アート」を媒介に、ダイバーシティの意味を“体感”できる本イベントを、ぜひチェックしてみてはいかがでしょうか?

<参考>
●プロジェクト公式サイト
日本財団DIVERSITY IN THE ARTS
(日本財団公式サイト)

●特設サイト
日本財団DIVERSITY IN THE ARTS企画展「ミュージアム・オブ・トゥギャザー」


DIVERSITY IN THE ARTS TODAY