REPORT
レポート

コンクリートから野菜へ 都市からみた“農”の持続可能性―テクノロジーは日本の未来を救うのか?

2019/11/30(土) 10:00~12:00

2019.12.17
私たちが生きていく中で欠かせない“農と食”

コンクリートから野菜へ 都市からみた“農”の持続可能性―テクノロジーは日本の未来を救うのか?

<登壇者>
芹澤 孝悦さん(プランティオ株式会社 共同創業者/CEO)
大津 愛梨さん(O2Farm 六次産業化・渉外担当/NPO法人田舎のヒロインズ 理事長/里山エナジー株式会社 代表取締役社長)
秋元 里奈さん(株式会社ビビッドガーデン(食べチョク) 代表取締役社長)
<日本財団>
野本 圭介


少子高齢化、産業構造の高度化による担い手の減少、耕作放棄地、食料自給率、輸入自由化、新規参入への壁など、日本の農業は今たくさんの問題をかかえています。
「生きていく中で欠かせない“農”。しかし都市で暮らしていく中で“農”との接点がない。現状のままでいいのだろうか?」と現在の農業の問題定義をする進行役の野本さん。
まずは“農”に向き合い活動している3人の登壇者、秋元さん、大津さん、芹澤さんが三者三様の活動や取り組みについて話していきます。

生産者のこだわりが正当に評価される世界へ

秋元さんは農家と消費者を直接つなぐ「食べチョク」というオンラインマルシェを運営。オーガニック農作物をはじめ、農家は「こだわればこだわるほど儲かりづらい」という構造に気づき、生産者のこだわりが正当に評価されて作物を売買できるようにということが念頭におかれたサービスです。生産者と消費者の間で、おすすめの食べ方やレシピの質問、感想のやりとりができるなどコミュニケーションが取れるのも特徴。生産者としてはフィードバックがあることでモチベーションの向上にもつながり、消費者としては作物や生産者のストーリーを知ることで農業や産品を身近に感じられる利点があるそうです。

農村の風景を守っていきたい

大津さんは農業を続けることで農村の風景を引き継ぎ、農業だけでなく生態系や景観、文化などを守りたいと話します。欧州では農村は国を守る重要な役割としてリスペクトがあるが、日本では農業と個々の意識に距離があると問題定義。その上で、生物の多様性、自然資産がとても豊かである日本の魅力を伝えます。農村は在来種を守る、エネルギー資源、環境保持、防災などのほか、子どもにとっての遊び場かつ学び場にもなるなど多面的な機能を持つもの。国民を守れるのは農村であり、それを守るのは農家であると語ります。

“農”のアップデート

芹澤さんは「自給自足ではなく供給供足する世界」を理念に、渋谷など都会の商業施設やオフィスなどの屋上を菜園化し、コミュニティの醸成を図るシェア型農園を展開、またFarm to Tableを軸としたイベントも提供しています。農園には、収穫時期や作物の状態、手入れの時期などがわかるセンサーやAIなどのテクノロジーを導入し、IoTファーム化。「新しい発想で都会に住む人たちにも“農”を身近にする。時代に合わせてアップデートすることで新しい世界が切り開かれる。新しい農業の形を提案することで都会でも持続可能な食が実現できるのでは」言います。


登壇者のお三方からは、会場に向けて「どのような行動を起こせばいいのか」メッセージがありました。

「小さな一歩を踏み出してほしい。例えばマルシェに寄る、野菜について検索してみる。そんな一人ひとりの小さなアクションが文化をつくっていく」(秋元)

「どういうルートでもいいから農家の友達を作ってみてほしい(それにより“農”が身近になる)。またタネをまいたらなにかが出てくるというのは3歳の子でも理解できてしまう、逆に言うと大人の知識が必要じゃない理屈がそこにはある。身近にタネをまける環境があることはわかったと思うので、ぜひ土に触れてみてほしい。」(大津)

「“農”に関する動きは世界的にも注目されており、こういった方々(秋元氏、大津氏)が活躍される中で、次の形の“農”のアップデートができてくるのではないか。今の時代はインターネットもあるので、繋ぐことや伝えること、そしてそこから変わることなどが出てくると思う。PLANTIOとしては、明日から「人類のできる食糧生産」としてタネをまくということからアクションしてもらえればいいなと思っています。」(芹澤)

農は手の届く距離にある

もともと農耕民族だった日本人。アグリカルチャー(土を耕し、収穫を楽しむという“農”の営みや文化)が、古来よりライフスタイルの中心にありました。しかし、戦後の農地開放や高度経済成長以降、“農”の楽しさは徐々に忘れられ、人々から遠い存在になってしまいました。一方、ロンドンやニューヨークでは都市部におけるアグリカルチャーを楽しむ文化が根付いてきているといいます。「人」と「農」は切っても切り離せない関係。登壇者のお三方をはじめ、都市と“農”を繋げようと新たな接点を創りはじめている人たちもいます。マルシェに寄ってみる、農村へのバスツアーに参加してみる、Farm to Tableに参加してみるなど、小さなアクションを起こしていくことで、都市と“農”の距離は縮まり、また都会に住んでいても“農”は手の届く距離にあることを肌で感じることがこれからの未来に繋がるのではないでしょうか。