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レポート

今を生きる私たちの「しんか論」 AI時代に問われるヒトの「進化」と「真価」とは

2019/11/30(土) 13:00~15:00

2019.12.10
ヒトの本質に知り、AI時代をしなやかに生きる

今を生きる私たちの「しんか論」 AI時代に問われるヒトの「進化」と「真価」とは
<登壇者>
冨手 要さん(株式会社センスタイムジャパン シニアリサーチャー)
西田 陽光さん(一般社団法人次世代社会研究機構 代表理事、財団法人日本自治創造学会 幹事・企画委員長、一般社団法人夜桜能理事)
南 直哉さん(福井県霊泉寺 住職、青森県恐山菩提寺 院代)
若新 雄純さん(慶應義塾大学 特任准教授、株式会社NEWYOUTH 代表取締役)
<日本財団ディレクター>
森 啓子


高度技術が進みAIのテクノロジーが発達する便利なテクノロジー時代になっても、人間は生きづらさや不安を抱えているものです。スタートにあたり西田さんから「本日は予定調和ではなく様々な角度から経験を踏まえたお話を各人から引き出して行きたい」とあり、冨手さん、南さん、若新さん、西田さんの順にそれまでの経験と生き方について話して頂きました。

AIは人間を超えるだろうか

「私たちの仕事がなくなるのでは?」「AIが人間を支配するのではないか?」という一般的な不安に対し、最先端の高度技術に関わる冨手さんは「人間と同等の曖昧さの中で判断ができるかどうかと問われると、当面はそんなに簡単にAIは人間を超えることはできない」と技術者として現状の解説をされました。それを受け、西田さんは、昨今、「生命工学」「人工食糧」への投資が増えていることに触れ、研究領域や開発のターゲットとスピードは「経済」からの影響が多大であると指摘しました。
南さんは、ご自身が3歳の頃、アレルギー性喘息でえも知れぬ苦しさからいつも「死」が身近にあったこと、「死」「生」とは何か、おのずと「自分」とは何かを考え続けた経験を話されました。他者との関係性の中で『私』がある、さらに、その関係性を築くコミュニケーション媒体が身体・声から、活版印刷、テレビ・ラジオ、AI・IOTと変化するにつれ、人間関係のあり方、人のあり方に大きく影響を与えているのではないかと話されました。

愚かさも含めて人間

南さんは「“賢さ”をどのように捉えるかの定義により、この先、もっと苦しさや生きづらさを感じやすい時代になるのではないか」と現代の価値観に警鐘を鳴らします。若新さんは「“人間が知性的な生き物”だと勘違いしている人が多いのでは。知性とは何を捉えての価値を言うのだろうか」と投げかけ、「人間とは愚かなところ、例えば嫉妬、エゴイズム、それぞれの持つパーソナリティこそ、人間らしく生きていることである」と語りました。
西田さんは、お寺で開催している智門塾にやって来た不登校の高校生が、お寺の仏像を見て「良いデザインだねぇ」と感動したエピソードを紹介し、「伝統、文化というのは理屈ではなく、五感で体感するのが大事。印象に残ったものが、その後、価値を見い出し、多くのものを学ぶ時に作用する」、そして特別養子縁組の世論形成から児童福祉法改正に至らしめた経験から、「社会を変えて行くには、自分の縁のある所から、今できることからとにかくやってみる、伝えてみることを続けて行く努力が大切」と語りました。

生きる存在のあり方

南さんは、死について「現実は一義的に決まらないもの。実は死者とは生きる人にとってリアルなもの。死者は実際生きている人間より強烈に実在し、私たちに影響を与えている」、また臨終時の人が、自分が生きた意味があったと感じられる「物語」を欲しがったエピソードを語る一方で、「人間の実存は、死を選択することができる」とも語りました。「生きている人間の本質はトライ&エラー。エラーの意味はプログラミング出来ないこと。このことをどれくらい感じられるかが人間の生きている意味なのでは」と話されました。
客席でのディスカッションの時間も設けられ、隣り合った来場者同士、「自分自身に問う」という質問がお題として上げられました。

パラダイムシフト時代の人間の生き方

富手さん「新しい技術やテクノロジーを考えたり、新しい発想が生まれるのは、いつも人とディスカッションから」。
南さん「人と生きるのは面倒、そして苦しい。それでも手間暇かけながら面倒をみながら生きて行くことこそに価値がある」。
若新さん「ロボットには人間に代われないし、物語は作れない。思い通りにならないものこそが社会に積み上げられていて、そのことが社会を良くしている」。
西田さん「ホモサピエンスが複数の人類種の中で唯一現存する優位性は前頭葉の認知能力すなわち、概念を構築創造する能力。人間の最大の特異性を活かし、こんな人になりたい、こんな社会を目指そう等、共感したこと、閃いたことを行動に移すことで未来が作られて行く。まずはできることからチャレンジして欲しい」。

今回のご登壇者がそれぞれの人生で実際に体験されてきたお話は、臨場感あふれたエピソードと印象に残る言葉が多く、勇気づけられるセッションでした。