REPORT
レポート

新たなエコシステムのカタチとは 新時代に持続的なソーシャルイノベーションを生み出すために

2019/11/30(土)16:00~18:00

2020.01.10
企業×イノベーション
ユニコーンではなくゼブラを目指せ?草食系の社会的企業とは

インパクト投資の可能性



<登壇者>
田淵 良敬さん(社会変革推進財団インパクト・オフィサー)
甲田 恵子さん(株式会社AsMama 代表取締役CEO)
山中 礼二さん(一般財団法人KIBOWインパクト・インベストメント・チーム ディレクター、グロービズ経営大学院教員)
Ms. Aniyia L. Williams(Zebras Unite Co-Founder)※オンライン登壇


ユニコーン企業は急成長を目指しすぎると、時に社会や地域に対してネガティブな影響を与えかねないという懸念から生まれた新たなコンセプトである「ゼブラ企業」は、新しい価値を生み出しながらも、持続可能で地域社会や顧客、社会と共存共栄しながら発展していくことを目指した企業としてどうあるべきか。本セッションでは3名の登壇者を迎えてパネルディスカッションが行われました。

モデレーターの田淵さんを中心にゼブラ企業・社会的企業とインパクト投資について話し合われ、一般財団法人KIBOWの山中さんは「インパクト投資をするときに大事にしているのは社会を大きく変えること。そのために自分の立ち位置を確認すること」とし、投資家としてのあり方などを語りました。甲田さんは「倫理観を重視した投資をしなければならない。企業と投資家は同じ考え方を共有することが重要です」と、自身の経験から多くの課題を上げ、アニヤさんは「ゼブラ企業は、持続可能な成長を目指し、利益のみを優先するというより、健全な利益を大事にしています」と語りました。経済的リターンのみを目的とした投資家が多い中、ゼブラ企業の課題やイノベーションを実現するためにはどうすればよいのか、様々なディスカッションが行われました。





ファイナンス×イノベーション
新時代に必要とされている革新的な資金調達・提供手法とは?

インパクトを創出するための資金提供



<登壇者>
鈴木 栄さん(一般社団法人ソーシャル・インベストメント・パートナーズ(SIP)代表理事兼CEO、認定特定非営利活動法人日本ファンドレイジング協会理事、認定特定非営利活動法人ハンズオン東京理事)
高塚 清佳さん(新生企業投資株式会社インパクト投資チームシニアディレクター)
野池 雅人さん(プラスソーシャルインベストメント株式会社代表取締役社長)
菅野 文美さん(社会変革推進財団(SIIF)事業本部長)


従来、社会課題解決のプレイヤーは行政以外ではNPOであり、営利企業とははっきりと役割が分かれていましたが、最近は境目が曖昧になってきており、それに対する資金提供のあり方もさまざまになってきています。SIIFの菅野さんがモデレーターを務め、インパクトを創出するための資金提供の新しいあり方について、3人の登壇者たちによって語られました。

ベンチャーフィランソロピーに本格的に取り組む鈴木さんは「受益者にお金が渡るようにではなく、(受益者へのインパクトを拡大できるように)組織が成長するための資金として使ってもらう。金銭的ではなく社会的リターンを最大化することを目指す」と言い、地域の課題解決へのインパクト投資をしている野池さんは、「住民にとってのインパクト(便益)だからこそ、住民自身がリスクをとって投資する。(社会的投資という形で参加してもらうことで)住民たちと一緒に課題解決のプロジェクトを作っていく」と話します。大手の金融機関の中で日本初の本格的なインパクト投資ファンドを立ち上げた高塚さんは、 「社会性を可視化するのがインパクト投資の一つの大きな特徴。金融機関としての経済的なリターンとリスクのバランスの見方は崩さない。そこに社会的インパクトという軸を加えている」と語りました。
三者三様の特徴はありますが、成長ステージや社会課題、地域軸などを鑑みて、多様なプレイヤーをいかに有機的につなげていき、より大きな社会課題を解決し続けられるようなエコシステムを作っていくことが一番のポイントと、意見はまとめられました。





行政×イノベーション
行政分野におけるソーシャルビジネスの参入の可能性

成果連動型民間委託契約(PFS/SIB)という新たな取り組み



<登壇者>
石田 直美さん(内閣府成果連動型事業推進室 参事官)
幸地 正樹さん(ケイスリー株式会社 代表取締役CEO)
福吉 潤さん(株式会社キャンサースキャン 代表取締役社長)
戸田 満さん(社会変革推進財団 インパクト・オフィサー)

まだまだ聞きなれないSIB(ソーシャル・インパクト・ボンド)やPFS(ペイ・フォー・サクセス)とは、2010年にイギリスで初めて導入された仕組みで「事業の成果に連動して、委託料の最終支払い額が決まる、行政サービスの民間への委託業務契約です」と戸田さんは説明します。ゲストの石田さん、幸地さん、福吉さんの3人は本邦においてのSIBのパイオニアとして実践してきました。2017年に始まった日本での第一号案件は、八王子市から(株)キャンサースキャンが受託した大腸がん検診受診勧奨事業です。
日本人の死亡要因の第一位はがん。医療技術が進んだ先進国で早期発見できないのはがん検診の受診率の低さが問題であると提起し、まずは検診受診率をあげることを成果指標に設定したのが八王子市の事例でした。まずは受診勧奨チラシの改善から始めて、平成28年度時点では9%だった受診率が、本事業の結果として平成29年度には27%まで向上しました。日本初の成果連動型事業として結果が出せたと話します。

成果連動型事業(PFS/SIB)の未来
八王子市を皮切りに、現在日本では健康医療分野を中心に約20件の成果連動型事業が実施されてきました。立ち上がりの数字としては短期間で多くの案件が実施されましたが、今後はひとつひとつの規模を大きくしていかないと持続可能な仕組みにはならないと問題提起されました。「単に行政コストの削減を意図するだけではなく、SIBが行政サービス全体を成果志向にしていくきっかけにならなければならない」と、SIBの未来について、もっと変えていこうという意志が伝わるセッションとなりました。