SPECIAL
スペシャルコンテンツ

「人を幸せにすることができる」料理研究家・土井善晴が語る“料理が持つ力”

「ホメラニアン ホッとフォーラム supported by 日本財団」シリーズ#8

2019.11.29

コラムニストの犬山紙子(月曜&火曜担当)と、アプリクリエイターの関口舞(水曜&木曜担当)がパーソナリティをつとめるTOKYO FMの生放送番組「ホメラニアン」。11月25日(月)放送の「ホメラニアン ホッとフォーラムSupported by 日本財団」のコーナーでは料理研究家の土井善晴さんをゲストにお迎えしました。

(左から)土井善晴さん、犬山紙子

作る人と食べる人の関係で “食事”が成立する

犬山

料理研究家として活動する土井さんは1957年大阪生まれ。スイス、フランスで料理を学び、帰国後、大阪の「味吉兆」で日本料理を修業。1992年には「おいしいもの研究所」を設立。料理番組『おかずのクッキング』『今日の料理』の講師としてご活躍する一方「一汁一菜でよいという提案」など、著書も多数、手掛けていらっしゃいます。そして最近は土井先生のTwitterも話題になっているということで。

土井

そうなんです。

犬山

私のタイムラインにも、“土井先生のつぶやきを見てすごく楽になった”っていう書き込みが流れてきて。

土井

そうなんですか。ありがとうございます。

犬山

この間の「赤福が朝ごはん」。あのつぶやきも、みんな“あぁ、楽になる”っていうふうに。

土井

何で楽になるのか知らんけどね。

犬山

はい(笑)。多様な食卓というか、多様性を認めてくださっているからなのですかね。

土井

いやいや。家の家庭料理というのは、レシピとかそういうんじゃなくて、今あるものを食べるっていうことが生きていく力でしょう。

だからあるものを食べるっていうのは“あぁ、これどうして食べよう”って思うことそのものが、実はクリエイティブなんですよ。だから料理って、作る人と食べる人の関係の問題で。例えばこれが終わったら、今日は何が食べたい?

犬山

正直、肉まんが食べたいですね。

土井

そうやってね、食べる人だけだと、自分のことしか考えないでしょう。

犬山

そうですね。完全に欲ですね。

土井

本当に自分のことしか考えない。食べる人って、お腹空いたら機嫌が悪くなるし。

犬山

なるー!

土井

もう本当に、そういう食べるだけの人には、日本の食文化を任せておくわけにはいかないんですよ。

作る人と食べる人の関係で、はじめて“食事”というものが成立して。作る人は表現者、そして食べる人は観客、というね。この2つで食事が成り立つ。作る人って、あなたのことを考えるでしょう。

犬山

そうですね。

土井

だから人と人の間に、ええことが生まれるんですよ。それは何が生まれるの?

犬山

なんだろう。愛情?

土井

そうそうそう。結局ね、目に見えない人を思いやる気持ち、まぁ人間の情緒性みたいなのが生まれる。だから作る人っていうのは、きっと自然を振り返って“あぁ今日はこんなお天気だから”って素材のことを思うわけ。

そうして、こっちを見て、あなたのことを考えて“じゃあ、何を食べさせてあげよう”“今日は遅くまで仕事をしていたから、また明日でも。軽いものでいいよね”、とか。あなたのことを考えて。だから物と自然と人間、人間と人間の間に情緒、目に見えない大切なものを作り出すのが、実は食事なんですよ。

犬山

なるほど。ただの消費だけではなくて、そこの情緒を含めて。

土井

そうそうそう。ただ食べるだけだったら、別に家庭料理なんていらないんですよ。売っているわけだから。ちゃんと料理をするっていうことで、初めて意味が生まれるんですよね。

家庭の料理で「いろんな無限の経験をしている」

犬山

今深く沁みたんですけれども。さぁ、そんな土井善晴先生とお話する議題、こちらです。「日本食を褒めたい」とのことで、健康的でおいしくて美しい、そんな日本食の素晴らしさについて、土井先生と一緒にお話していきたいと思います。ということで、今もまさに情緒の……。

土井

もう既に話したけど(笑)。

犬山

お話を頂いて。はい。いやでも食べることで、もちろん血と肉になるっていうところだけじゃなくて、心までその情緒を受け取ることが出来る。

土井

その情緒というと、物と一緒に受け取っているのが、例えば“お母さん、このお芋が美味しいね”って言ったら“あなたよく気が付いたね。これ、おばあちゃんが送ってくれたお芋だよ”と。ということは、お料理の向こうの物を一緒に食べているんだということね。

そして洗い物のときにガチャガチャ音を立てていたら“今日お母さん何か機嫌が悪いんじゃない”とか、そんなことまでわかるわけでしょう。だから家庭生活のなかで、料理っていうところの現場において、いろんな無限の経験をしているわけですよ。

だから情緒を得る、気持ち、思いやる気持ちだけじゃなくって、これはおいしそうか、おいしくないかとか、いろんなイマジネーションを膨らませることができるの。それが、経験がなかったら、何も判断できないんだよ。だから、人の顔が見えないものを食べていたら、何も経験しないっていうことになるわけ。

犬山

そっか。思いを巡らせないし。自分のなかに。

土井

そうそうそう。想像力がない。想像力は、それこそクリエイティブのもとだから。だから、お料理して食べるっていうところが本当に大事で。この頃は、5人に1人の子どもが、家に帰ってもご飯がないなんて言われているわけでしょう。何でないの? って。本当にわかんないよね。その子ども達は、もう家族が頼りにならないわけよ。

だけども、小学校3年生でも一汁一菜なんかで味噌汁を作れたら、ご飯を炊けて味噌汁を作れたら“君のうち、ごはんないねやろ、うちおいで”って。小学校3年生でも自分で作って食べられたら、人を幸せにすることができるって。

犬山

人を幸せに。

土井

お料理ってすごいでしょう。

犬山

本当にその言葉が沁みます。

現代人は「食べ過ぎ」

犬山

土井先生は一汁一菜のスタイルを提案されていますが。

土井

お料理が作れない理由って、いっぱいあるよね。もう本当に大変だとか疲れているとか。でも、誰でも全てのステータスの人が、老若男女誰でもが作れるっていうのが、ごはんを炊いて味噌汁を作ること。

そしてそのスタイルっていうのは“汁飯香”って言って、ご飯と味噌汁と漬物が最小単位ですよね。味噌汁というのは、具だくさんにすればおかずの一品を兼ねるっていうこと。だったら、ご飯と味噌汁だけでいいわけですよ。これがね、昔からやっている日本人の食のスタイルということで。まぁこれさえ食べていたら、死ぬまで3食食べたら健康でいられるし、ダイエットにもなるしね。そしてね、集中力が増す。

犬山

集中力が増す。

土井

そうそうそう。やっぱり食べ過ぎやからね。今の人たち。そうでしょう?

犬山

耳が痛い……。

土井

足らない人はおかわりすればいい。そしてね、味噌汁作っているのって暇だから、その間に魚焼くことだって、余裕のあるとき、まぁ気持ちに余裕があってお金に余裕があって時間に余裕があるときに“何か作ってみよう”と思うふうにして、自分のライフスタイルを膨らませていけばいいよね。だから、何も余裕もないのに、何も作れないでしょう? さっきのシチューの話だって、味噌汁と同じだからね。

犬山

そっか。シチューも味噌汁も確かに。

土井

そうそうそう。大体、鍋って皆さん食べているでしょう。あれって味噌汁のことなんですよ。皆さんが食べている、ね。だから、全部煮立ったら“さぁ、食べよう”ってフタを取って食べ始める。それって超具だくさんの味噌汁。

犬山

超具だくさんの味噌汁。本当だ!

土井

本当なんですよ。それを味噌で付けたら味噌味になって、味噌汁だけどもしょうゆだったらしょうゆ汁ってことになるわけ。だから簡単だしね。これが幸せを作るもとになるんだったら“とにかく料理しろ!”って。料理したら幸せになるっていうことなんです。

犬山

お鍋のお話を伺ったのですが、海外の食のトレンドから見て日本食の立ち位置についても。

土井

外国から見たら、日本の食というのはとてもユニーク。でも、何が日本料理かってわかっていないからね。この前もフランスに「日本の食文化」ということで話をする機会があったんですよ。そうして、お刺身とか、お寿司とか、生で魚を食べるということで日本に惹かれていて、こんなおいしいものないっていうか、初めて分かったと。

だけども今から20年前なんて、生食の生で寿司食べて、魚を食べるんだろうって、野蛮人扱いですよ。それがこれだけ、ね。日本食は何も変わっていないけど、彼らが少しだけ、ね、和食っていうか感性を広めたっていうことだよね。まぁこれから、やね。

犬山

そっか。感性が広がっていく。

「騙されたと思ってお料理をして」

犬山

最後に、毎日忙しいなかでも自炊をする皆さんにメッセージをお願いします。

土井

まぁとにかくねぇ、自分で疲れていたりしたら、とにかくね、味噌汁でいいわ。そしてごはんを炊いてください。ごはんしっかり食べても太らないって言っていたからね、昨日テレビで。

そして自分で作ったものいうのは、自分を傷つけるもの何一つ入っていないから、1人で自炊していても一人二役。食べる人と、作る人がこれ、両方いてるわけだから。そこにね、料理するすごさがある。

自信になるし、癒しになるし、ストレス解消に。そして元気になるから。とにかく騙されたと思ってお料理をして下さい。そしたら、味噌汁でいいからね。すぐできる。いいこときっとありますよ。

犬山

すごい勇気の出るお話。

SIFと東京FM「ホメラニアン」はコラボレーションコンテンツ「ホメラニアン ホッとフォーラム」を10月7日~11月25日まで計8回放送しました。番組の概要は、下記をご覧ください。

<番組概要>
番組名:ホメラニアン
放送日時:毎週月~木曜 20:00~21:30
パーソナリティ:犬山紙子(月、火曜)、関口舞(水、木曜)
番組Webサイト: https://www.tfm.co.jp/homeranian